(株)海の中道海洋生態科学館
マリンワールドPFI(株)
代表取締役社長 岡村 卓也氏
1988(昭和63)年卒
私は、経済工学科(児玉ゼミ)を卒業後、地元企業(西鉄)に入社して30年目を迎えており、昨年6月より福岡県唯一の水族館「マリンワールド海の中道」を経営する子会社に社長として出向しています。日本は、園館数が世界の2割に及ぶ水族館大国といわれますが、公営か、民営であっても何らかの形で公的資金が投入される園館が多く、マリンワールド海の中道もご多分に漏れません。つまり、水族館は、単なる営利を目的とした商業レジャー施設ではなく、教育・文化の振興や自然保護の啓蒙、地域経済の活性化など幅広く地域に貢献できる施設であり、いわば「地域の財産」といえます。
水族館事業の経験はありませんでしたので、異動内示を受けたときは少々戸惑いましたが、開業以来28年ぶりの全面的なリニューアル計画を完遂することが主な役割であり、地域の財産形成に貢献できることにやりがいと幸せを感じております。また、社長のほかに専門的知識と経験が豊富な館長が居り、水族館の具体的運営については館長が責任を持つ(これは欧州型の水族館統治であり、米国型は館長が経営責任者を兼ねるようです)ことになっておりますので、何とかなりそうです。
そして、本同窓会報第62号でも紹介されましたが、昨年11月の第61回経済学部同窓会コンペを通じて、「仙台うみの杜水族館」の木村博社長(経済工学科・昭和58年卒)と知り合うことができました。奇しくも、三井物産に在籍されている木村先輩も同じような境遇にあり、昨年3月より、東北震災復興の一環として同社が投資を行い開業したばかりの仙台うみの杜水族館の社長をされております。水族館は、開業(或いは建替えや大規模リニューアル)の年に来場者のピークを迎え、その後は数年で飽きられ、コアなファン以外は見向きもしなく傾向にあるため、慎重な投資計画と思い切った施設運営が必要となります。また、動物園と同様に水族館においても、外圧などにより展示生物の入手が困難になる方向に進んでおり、野生の鯨類(イルカやクジラ)の捕獲制限など水族館経営者にとって頭の痛い問題が多々あります。木村先輩との出会いは、館長任せでは解決できないような経営問題に対処するためにも極めて意義のあるものだと思います。
同窓会の宣伝のようですが、要するに、九大経済学部同窓会によって、東西の有力な水族館のトップ交流に繋がったことになります。このことは、ミクロ的には、各々の経営者の意思決定のための貴重な情報源となり、また、マクロ的に見ると、各々の水族館事業を通じて、お互いの地域へと還元されていくこととなります。そして、私個人といたしましては、杜の都・仙台に出張する大義という大きな実利を得たわけでございます(笑)。木村先輩、その折には牛タンで一献、よろしくお願いします。
最後に、5月下旬、公益社団法人日本動物園水族館協会の年次総会に出席する機会を得ました。日本の動物園と水族館の黎明「東京都恩賜上野動物園」(通称:上野動物園)が、大正末期に宮内省から東京都に払い下げられた歴史的経緯からか、同協会の総裁は秋篠宮文仁親王殿下です。年次総会にもご臨席を賜ることとなっており、懇親会の場で直接言葉を交わすこともできました。折りしも、眞子様のご婚約内定が報道された直後で、多くのマスコミが会場に集まっておりました。我が愛娘は眞子様と同い年ですので、祝福と殿下のお気持ちをお聴きしようと意気込んでおりましたが、宮内庁からのお達しがありできなかったことは残念でした。
しばらくは、なかなか経験できない、比較的ストレスも少ない、かつ、癒しの空間を持つ水族館勤務が続きそうですので、存分に働きたいと思います。