九州大学助産師同窓会 みのり会 お知らせ詳細

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2021年3月17日

中野仁雄先生追悼文

中野仁雄先生との思い出

専攻科11回生

九州大学病院 山下春江

 

私が九州大学病院に就職したのは平成元年で、中野先生とお会いするのは、毎週火曜日の教授回診でした。中野先生のお話は難しく、回診の介助につくのはとても緊張していました。

中野先生とよくお話をするようになったのは、平成9年から始まった行政研究に助産師が参加するようになってからです。「妊産褥婦のメンタルサポートは助産師の役割だ」という中野先生の一言で、助産師が行政研究に参加し、精神科診断面接を学び、妊産褥婦のメンタルサポートを行うようになりました。行政研究がきっかけで、九州大学病院には産婦人科と精神科が連携した母子メンタルヘルスクリニックが開設されました。産科と精神科の連携は、全国でも先駆け的取り組みでした。

行政研究の助産師のリーダーとして東京等で開催される班会議に同行していました。全国の周産期のメンタルヘルスに取り組んでいる産婦人科医師、精神科医師、助産師等と知り合いになり、この人脈は私の大きな財産となっています。班会議では夜遅くまでお酒を飲んだことも思い出です。必ず3次会は宿泊しているホテルのバーで、カクテルを飲んでいました。次の日が会議なのに5~6人で遅くまでお酒を飲み、中野先生が次の日会議に出席できるか、毎回皆でハラハラしていました。班会議の中でも一番の思い出は、熊本大学での会議の後、田原坂観光をしたことです。医局旅行のようだと中野先生は楽しそうでした。熊本に向かう列車の中、帰りの列車の中では一緒にビールを飲み、帰りは途中の田原坂で下車し、田原坂観光をしました。中野先生には、みのり会の同窓会で、特別講演をして頂いたことがあります。講演のパワーポイントの1枚に中野先生が教授時代の歴代の看護師長の写真があり、私の写真は田原坂観光時に撮ってもらったものでした。中野先生にも田原坂観光は思い出になっているのかとその時思いました。

私は中野先生が九州大学病院長の時、ロンドンに半年間の海外出張に行かせていただきました。イギリスは周産期メンタルヘルスの研究が日本よりも進んでおり、「ロンドンに行って学んでくるように」と言われ、行くと返事をした覚えはなかったのですが、行くことになっていました。生活に困らないようにコーディネートしてくださる精神科医師を紹介してもらい、ロンドン大学精神医学研究所周産母子部門で半年過ごしました。私の英語力では、見学が主でしたが、ロンドンの助産師の家庭訪問に同行することもできました。帰国した時中野先生からは「本当にロンドンに行くとは思わなかった。心臓に毛が生えている。」と言われ、初めての海外がロンドン半年でしたので、皆にそう思われていたのかもしれません。

中野先生が病院を退職されてからは、お会いするのは年1回の産婦人科同門会の懇親会でした。ここ数年は会えていませんでしたが、2020年1月18日に班会議で一緒だったメンバーで集まり中野先生と新年会をしました。この新年会が、中野先生との最後の食事会となりました。その時先生はとてもお痩せになっていました。楽しそうにお話しされ、食事も召し上がっていましたが、大好きなお酒は、少ししか飲まれませんでした。

2020年10月に先生が入院されたことは、部署の看護師長より報告があり、面会に行く予定でしたが、面会の前に急激に状態が悪くなられお亡くなりになりました。病院の職員ですので、病室でお別れすることができました。とても安らかなお顔で、眠っていらっしゃるようでした。先生との最後のお別れを多くの人が望んでいましたが、コロナ禍でそれはかないませんでした。コロナが収束したら、関係者で集まり、先生との思い出を語り、先生を忍びたいと思っています。