検索

九州大学助産師同窓会 みのり会

お知らせ
2021.2.22 正本宗子先生追悼文

正本宗子先生を偲んで      専攻科 4回生  光武 玲子

 

私は昭和56年4月に九州大学医療技術短期大学専攻科特別専攻に入学しました。助産師を志した動機は、看護学生の母性実習で分娩の見学をさせていただいた際に、祝福されている母親や分娩に立ち会っている医療者全員が喜びに満ち溢れ、新しい生命が生まれてくるその光景を忘れられなくなる位に感動したことがきっかけでした。入学後の1番の思い出は、専攻科4回生20名の素晴らしい同級生と共に過ごした楽しい学生生活でしたが、恩師である正本先生、古賀先生、斎藤先生の3人の先生についても懐かしく思い出します。

私が専攻科に在籍していた昭和56年には正本宗子先生は、九州大学医療技術短期大学部の助教授でした。正本宗子先生から、助産論Ⅲ・助産論Ⅳ・助産論実習・助産業務管理Ⅰ・助産業務管理実習などを教えていただきました。いつも笑顔で学生や患者さんと接してあり、凛とした優しさをもった先生であったことを思い出します。しかし、不出来だった私は、正本宗子先生の思いやりのあるメガネの奥の厳しい視線も、いつも感じていたようにも思います。というのは実習や演習では幾度となくご指導や注意を受けていたからです。当時は、助産師学生は、初産婦と経産婦の2人の受け持ち患者さんを妊娠初期から受け持ち、妊娠中期から後期にかけて患者さんのご自宅へ家庭訪問に行かせていただき、自宅での様子を把握し、分娩・産褥期・1か月健診まで継続して担当するという形でした。助産師学生としては、少子化の現在ではとても考えられない贅沢なシステムでした。その家庭訪問にも一緒に行っていただき、私の足りない部分を丁寧にご指導いただいたことを思い出します。

九州大学医療技術短期大学専攻科特別専攻 創立80周年記念誌に正本宗子先生が書かれた思い出の教育というテーマの寄稿文の中に、「看護教育は患者の心理をはやく理解し、それに対して援助することにあると思います。」と書かれてあります。また、「戦争で福岡空襲により教室を転々と変わりながら学び卒業いたしました。教育が前後左右に整理されたように考えられます。」と、ご自身の戦争を交えた学生時代の体験も書かれています。どのような時代であっても看護教育は、患者さんの気持ちを第一に考えて患者さんに寄り添いサポートすることですよ、というメッセージを残してあるように思います。また、「看護はナイチンゲールの教育から宗教と精神のもとにあるということは現在も変わりないと私は思う。」と、看護教育の根本は普遍的で変化しないですよ。とご教示していただいています。

今、コロナ禍の状況で、オンライン授業をしていることを、正本先生に報告すれば、どのようにびっくりされるでしょう。現在とはかけ離れた時代と教育を経験された正本先生ですが、時が変遷しても、私は、正本宗子先生の書かれている普遍的な看護教育について忘れずに、次世代に伝えていきたいと思います。正本宗子先生ありがとうございました。

一覧へ戻る

ページの先頭へ戻る